英国のバレエ誕生に寄与し、
ロイヤル・バレエの礎となったのが
チェケッティ・メソッドです。

英国ロイヤル・バレエ創立者 デーム・ニネット・ド・ヴァロワ
英国ロイヤル・バレエ創立者
デイム・ニネット・ド・ヴァロワ
ランベール・ダンス・カンパニー創立者 デーム・マリー・ランベール
ランベール・ダンス・カンパニー創立者
デイム・マリー・ランベール
イングリッシュ・ナショナル・バレエ創立者 デーム・アリシア・マルコヴァ
イングリッシュ・ナショナル・バレエ創立者
デイム・アリシア・マルコヴァ
英国ロイヤル・バレエを創立したのは、マエストロ・エンリコ・チェケッティの教え子デイム・ニネット・ド・ヴァロワです。ランベール・ダンス・カンパニーを創立したデイム・マリー・ランベールも、イングリッシュ・ナショナル・バレエを創立したデイム・アリシア・マルコヴァもチェケッティの教え子でした。つまり、20世紀に英国バレエを確立したのはいずれも伝説のバレエ団「バレエ・リュス」を指導したチェケッティの教え子であり、英国ロイヤル・バレエを始めとする英国バレエで上演される多くの作品はチェケッティ・メソッドから多大な影響を受けています。伝説的な名ダンサー、アンナ・パヴロワやヴァーツラフ・ニジンスキーもチェケッティの教え子です。

マエストロ・エンリコ・チェケッティは、1820年に世界初のバレエ理論書を出版したカルロ・ブラシスの孫弟子。チェケッティは理論から実際の練習法を開発してそれを体系化し、劇場で踊るプロフェッショナルのためのカリキュラムを開発。上演作品に含まれる高度な完成形がどのような要素の動きから成るのかを精緻に分析し要素別エクササイズとして体系化しました。舞台を8方向に意識化(図1参照)させる事で、バレエのポジションはより洗練され、回転の技術は更にダイナミックに進化しました。また曜日別6グループのカリキュラムを組むなど練習の網羅性にも配慮しました。
それだけでなく、今までなかった新しいステップを組み込み、後のバレエ作品に新しい風を吹き込みました。それが「チェケッティ・メソッドが古典バレエとコンテンポラリーをつないだ」と言われ現在も世界で支持される所以です。

チェケッティの孫弟子にはあのサー・フレデリック・アシュトン(英国ロイヤル・バレエ芸術監督、振付家)がおり、彼はダンサー達に「チェケッティのポール・ド・ブラ(腕、頭、上体のエクササイズ)を毎日練習して、プロに必要不可欠な美しいラインの感覚、正しいポジション、腕や頭の動かし方、エポールマンを身につけるように。」と薦めていました。アシュトンの他、英国ロイヤル・バレエ伝説のプリマとなったデイム・マーゴ・フォンティンも、チェケッティの弟子マーガレット・クラスク(バレエ・リュス)の教え子でした。またダーシー・バッセル(英国ロイヤル・バレエ元プリンシパル)は英国ロイヤル・バレエ・スクール在学中に習ったチェケッティ・メソッドをこう振り返っています。「バレエ団に入団して、今までチェケッティ・トレーニングを受けて来られた事がいかに幸運であるか気が付いた」。

このような歴史をたどると、マエストロ・エンリコ・チェケッティが英国のバレエ誕生に寄与し、チェケッティ・メソッドが英国バレエの礎になったことが分かります。

チェケッティ・メソッドは現在も進化を続けています。時代の変化に応じて改訂および新しいエクササイズが加わっているほか、トップ・ダンサーのためのエクササイズだけでなく、そこに至るまでの過程で、身体能力と年齢などに合わせた21のグレードに合理的に体系化されています(図2)。
伝統に根ざし、世界的に支持されているチェケッティ・メソッド。その指導者は何段階もの厳正な試験に英語で合格して指導免許を取得します。正しいチェケッティ・メソッドは世界に通じる美への扉であり、その普及は日本のバレエにもさらなる花を咲かせる一助となることでしょう。

参考文献
「英国ISTD」 Webサイト https://www.istd.org/dance/dance-genres/cecchetti-classical-ballet/history-of-cecchetti/
「チェケッティ・インターナショナル」 Webサイト https://cicb.org/